車の運転とカラーユニバーサルデザイン

生まれつきの色弱の方の運転等は何故危険ではないのか

 本フィルタを使用した一般色覚者の車の運転は危険であると書きますと、それでは、色の見分けにくさの対象としているところの生まれつきの色弱の方の運転も同様に危険なのではないか?と誤解されるかもしれません。しかし、結論から言えば色弱者の車の運転は危険ではありません。
 それは、色弱の方のほとんどは生まれつきの色弱(先天的色覚異常)であることに理由があります。生まれつきであるがために、まず、視覚全体が、色弱の色覚特性に対応した適応をしており、一般的に、色弱者は青ー黄色の色については、一般色覚者よりも感度が高いとされており、また色の組み合わせによっては色の見分けが使えない場合があることから、明るさ(輝度)の違いに対する注意力が高く、さらに形態に対する注意力・記憶力がより高くなっていると言われています。
 上記特性により、車の運転中において、幼少時から慣れ親しんでいる物体(車の場合は信号や標識など)については、長年の経験を生かすことができます。例えば、止まれ信号の赤が、進め信号の青色よりも暗くかつはっきりしない色なのは奇妙、とかお考えになることがありつつも、幼少時より色の見分けだけでなく、さまざまな方法を用いて信号を判別することを繰り返して行っています。例えば、一番右のランプは止まれ(赤)、一番暗いのが止まれ(赤)などです。この様に、一般色覚者が色によって瞬時に信号や標識を判別する能力を幼児期から慣れ親しむことによって獲得しているのと同様に、色以外の様々な情報を組み合わせて瞬時に信号や標識を判別される能力を獲得されています。
 その一方、一般色覚の方は一番目立つ赤が止まれ、とかいう感覚で信号を判断されていますので、本フィルタ使用によって赤がほとんど感じられず、かつ暗くなりますと信号を見逃す、などの事例が生じ、大変危険だというわけです。

ではカラーユニバーサルデザインは必要なのか?

 交通信号のように、訓練や慣れ親しむことによって色弱であることが問題とならないのであれば、何故カラーユニバーサルデザインが必要か?ということになります。
 1つ目の理由は、克服可能であっても、やはりカラーユニバーサルデザインで設計された方が楽であるからです。一般色覚者の方にも容易に想像できると思いますが、黄色ランプを3つ並べて、一番上が止まれ、真ん中が注意、下が進め、だという信号だとしたら、信号の意味を理解することはするが、やはり信号を見るのに相当神経を使わないといけない、ということになると思います。それと同様で、適正な配色によって色の情報もうまく使えるのであれば、その方が楽なのはあきらかです。
 2つ目は、交通信号のように幼少時から慣れ親しんでいるものはまだよいのですが、新しい機器の操作盤など、全く未知なものが登場した場合には、経験で色以外のさまざまな見分け方(ランプが明るい方が実行中で、暗い方が停止中など)を身につけるのは、時間も労力もかかる上に、習熟するまでは危険も伴います。そのような事態をちょっとした色使いの配慮で防ぐことができるというところにカラーユニバーサルデザインの意義があります。


© 2007-2022 Itoh Optical Industrial Co., Ltd. All rights reserved.