何故色弱者のみにチェックを依頼しないか

このようなツールに頼らずに本当の色弱の方に色の判定やチェックをお願いするべきではないでしょうか?職場や学校にも沢山いらっしゃるはずです。

バリアントールの効果としていくつか上げることができますが、以下の点が関係するかと思います。

  1. 一般色覚者にも色弱者の色の見分けを体験していただくことによりカラーユニバーサルデザインに対する理解を深める。
  2. 一般色覚者にしばらく(数時間まで)かけていただくことにより、カラーユニバーサルデザイン上の問題発見をより促進する。
  3. バリアントールを使用した一般色覚者と色弱者がともに判定やチェックを行うことにより、色弱者の方に対しても新たな気づきの機会を提供する。

 2の効果は色弱の方のみに判定やチェックをお願いしている場合には、難しいかと思います。カラー関連のデザインをされている方でも、一般色覚者の場合には問題点になかなか気がつかないことがあるからです。また見分けにくい色の組み合わせについても、無限ともいえる色の組み合わせに対してすべて理解した上で作業するのは難しいです。よって、もし本ツールを使用しなかった場合、デザインが相当完成に近くなった段階で色弱の方にチェックをお願いすることになるかと思いますが、その時に数多くの色遣いの問題点について御指摘を受けることになるかと思います。その場合、デザインを何度もやり直すなど、カラーユニバーサルデザインの実施に多くの労力と時間がかかります。あらかじめおおよその色遣いをバリアントールで確認の上、色弱の方のアドバイスを受ければ、カラーデザインの修正箇所をずっと少なくすることができると考えます(はっきりと見分けられる色を使用していただければ、実質はほとんど無いかと思います)。

 3については、例がNHKの番組でも紹介されました。運転の項でも説明しましたが、色弱の方は「色遣いが合理的でない」とお考えになることがあっても、さまざまな色以外の情報を使って色遣いの問題点を克服されながら生活されています。番組では、取材に協力した色弱の方が、「 ここの点字ブロックは周囲のタイルと同じ色だと思っていた。」とコメントしていました。設計者側は点字ブロックを周囲のタイルより目立つように色をデザインしたつもりだったのかもしれませんが、結果としてその意図は色弱の方には反映されていないわけです。この例では、バリアントールを使用した一般色覚者と色弱の方とがいっしょにブロックを観察することによって、設計者の意図が反映されていないことが判明しました。また番組に登場した別の例で、「青信号(実際は緑に近い色)は水銀灯と同じ色であると思っていた。青信号とはその様なものだと思っていた。」というのがあります。これも同様の例です。これらの事例にあるように、色弱の方に設計側の意図が伝わっていない場合には、バリアントールを使用した一般色覚者と色弱者がともに判定やチェックを行うことで、カラーユニバーサルデザインを推進する上で大きな効果があると考えます。


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